予選通過から約1ヶ月後の9月8日。本選1回戦をシードとなったモ娘(狼)軍は、2回戦、ベスト16進出をかけて「でこフレ選抜B」チームと対局した。

1ヶ月も間があいてしまうと緊張感を保つのが大変だが、狼リーグ戦などもありずっと将棋を指していられたのは大きかった。それに亀自身のことを言えば、調子はどちらかというと良い状態を保てていたと思う。
それでも、対局当日の緊張感は予選からずっと変わらず相当なものだったが…。



今回のオーダーは1将亀、2将安倍さん、3将美貴様、4将ガキさん。前回とは全く違う順番で臨んだ。4人の並べ方は24通りあるが、どの並べ方をしてもしっかり戦えるのがモ娘(狼)軍の最大の長所である。
過去3局の戦形を見ても、四間飛車、居飛車穴熊、急戦石田流と、見事にバラバラ。相手チームはこちらのオーダーも戦法も予測不能なのだ。

今回は前日の作戦会議で、驚くべき秘策を用意していた。こちらの先手で▲7六歩△3四歩▲8六歩!(第1図)



初手に指せる30通りの手のうち最悪手として有名な▲8六歩。しかし角がぶつかっている局面だと話は別で、第1図から△8四歩に▲2二角成△同銀▲7七桂でバランスがとれている。以下先手は▲7八金から四間飛車にして、定跡から外れた力戦模様になった。



最初に形勢が動いたのは第2図。先手の奇策に対して序盤から慎重に時間を使い、すでに秒読みとなっていた後手が時間に追われて△6五桂と跳ねた。すかさず▲6五同桂△同歩▲7三角(第3図)で先手優勢。



これはもらったか、と思っていたが、第3図から△6四角に▲同角成としたのが逸機。▲8二角成△同角▲4六歩なら先手はっきり良しだった。


しばらく進んだ第4図。



4四の銀が助からず、先手がかなり忙しい。ここで▲7三歩成△同銀▲7二歩(7一角と5二金の両取り)という絶妙の手順があったのだが、秒読みの焦りの中で見つけるには難しすぎた。
実戦は▲5二角成△同飛▲6三金と進み、お互いが必死に技を出し合う熱戦が展開される。先手も後手も悪手は少なくなかったかもしれないが、リレー将棋らしい白熱した展開だった。ぜひここで並べてみていただきたい。



第5図は最終盤、116手目の局面。ここでは▲3五金△同歩▲2六歩△同玉▲2七銀△2五玉▲1七桂までの即詰みがある。

ガキさん、詰ましてくれ…!

秒読みの中、祈るように画面を見つめる。


そして ―――――▲4三銀不成。


とうとう、亀に2巡目がまわってきた。





交代の際の局面が第6図。

…寄りそうなのに、なかなか寄らない。
4人で考えても結論が出ないまま、亀は初めての2巡目へと出陣した。

思い切って開き直った。▲5五竜。この忙しい終盤戦で、何もせずに竜を逃げたのである。最善手ではないかもしれないが、おそらく相手が考えていなかった手で動揺を誘えたと思う。



亀自身もとても冷静な状態とは言えなかったが、第7図から▲3二銀不成△2二金▲4一竜△3五桂▲2三金△同金▲2一竜で後手投了。

パソコンの前には、大きくバンザイしている亀の姿があった ―――――



形勢が二転三転した将棋で、今までで一番の熱戦になった。
両チームとも細かい疑問手や悪手を数えれば相当な数になるだろう。それでも、悪手が多いからダメな将棋だったとは思っていない。

揺れ動く形勢。手の善悪を超えた気持ちの勝負。1人の悪手を4人でフォローし、4人で創り上げる棋譜。この一局には、将棋自体の面白さ、リレー将棋独特の面白さ、全てが詰まっている。



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