第1局を神懸かった逆転劇で制した狼軍。この勢いで次も・・・と思っていたが、そこに大きな壁が立ちはだかる。

第2局の組み合わせ発表の日。相手チームを見た瞬間、唖然とした。次に苦笑した。

しゅないだぁ〜ず

24で指している人ならたいてい名前は知っているであろう、24名人のしゅないだーさん。2775というレーティング点が、壁の大きさを物語っている。

去年のことを思い出した。初陣の予選第1局、相手は当時の24名人オオクワさん率いるチームだったのだ(2年連続で名人のいるチームと当たるって、かなりすごいと思うんですけど)。その将棋は、メンバーの必死の粘りも報われることはなく、完敗。

・・・あの時は右も左も分からなかったけれど、今は違う。こんなに頼もしい仲間がいて、自分自身だって成長できたのだから。



8月1日の21時過ぎ、対局開始。狼軍のオーダーは美貴様→安倍さん→亀→ガキさん。相手チームはセオリー通り、終盤に差し掛かる3将にしゅないだー名人を配置してきた。つまり、亀がしゅないだー名人と指すことになる。

作戦は単純明快。とにもかくにも1将のところでリードを奪ってしまい、3将は詰ますだけ、という展開を目指すものだった。

狼軍の先手番となり、初手からの指し手は▲4六歩△3四歩▲4五歩△3二金▲4八銀△4二銀▲4七銀△3三銀▲4六銀△4二飛▲7六歩△4四歩▲4八飛(第1図)



事前に棋譜を調べて、相手チームの1将は四間飛車党だということが分かっていたので、それを狙い打ちしようという作戦である。それにしても▲4六歩〜▲4五歩は、相手チームも観戦者も面食らったことだろう。12手目に早くも駒がぶつかり、まずは狙い通りといったところ。

第1図以下△4五歩▲同銀△6二玉▲3六歩△7二玉▲6八玉△9四歩▲3五歩△同歩▲3四歩△2四銀▲2二角成△同金▲3一角(第2図)



相手チームは2将も1800点という点数なので、とにかく早め早めにリードを奪いに行く。自陣の整備は▲6八玉の一手だけで済まし、▲3五歩の仕掛け。▲3四歩△2四銀とソッポに行かせ、▲3一角は手応え十分。最高の滑り出しとなった。



中盤戦の第3図。5一の底歩が固く、リードしているとは言っても油断ならない形勢である。見ていた亀はここで▲4三歩△同金直▲5二飛成△同歩▲4三銀成△4七飛▲5二成銀のような激しい順を読んでいたのだが、指している安倍さんは見ている亀よりもずっと落ち着いていた。

第3図以下▲5六飛△6四桂▲6六飛△4三香▲同銀成△同金直▲8六香△3四金▲4三歩△3三銀▲1一竜△4四金▲3四歩△同金▲5四香△6二銀打(第4図)



当たりになっている飛車をかわす▲5六飛。なんとも冷静。
△3四金は、歩切れを解消できるが金がソッポなのでやや疑問か。△3三銀〜△4四金として遊び駒の金銀を活用しようとするが、▲3四歩がピッタリの一着。△同銀は▲4二歩成△同金▲5一竜だし、本譜の△同金は丸々一手得。▲5四香が痛烈で、はっきり優勢になった。

そして第4図で亀にバトンタッチ。いよいよ、しゅないだー名人との勝負。

第4図以下▲5二香成△同歩▲8三香成△同玉▲7五桂△8四玉▲7一竜△7六桂▲同飛△7一銀(第5図)



作戦会議で確認したのは、本譜の順で▲7一竜を△同銀と取った時詰みがあるかどうかを読むことと、△9五角で駒を抜かれるような筋に注意すること。
対局が再開してから少し読んで、▲7一竜△同銀には▲8三金△7四玉▲6五銀以下の追い詰めがあることを発見した。▲7一竜に△9五角と打たれても▲7七桂と跳ねて問題ない。

間違いなく勝ちのはずだった。・・・それなのに、何か嫌な予感が拭い去れなかった。名人の威圧感、なのかもしれない。

果たして、▲7一竜の瞬間に△7六桂!全く見えていなかった一手で、指された瞬間頭の中が真っ白になった。▲同飛に△7一銀。

どう寄せる。・・・どう寄せるんだ。

第5図以下▲6六桂△8二香▲7七桂△7二角▲8六飛△9三玉▲8三金△同角▲8四銀△9二玉▲8三桂成(第6図)まで、先手の勝ち。



感想戦の時、第5図で詰みがあると指摘された。▲8五銀△同玉▲7七桂△7四玉(△7六玉は▲8六金まで)▲6五金△8四玉▲8六飛△9三玉▲8三飛成(変化1図)。



言われてみると特別難しいこともない詰みなのだが、△7六桂の瞬間からずっと頭の中が真っ白でそこまで読む余裕すらなかった。このあたりはもっと精神力を鍛えなければいけない。

本譜は寄せが見えない焦りから「逆転」の2文字まで頭の片隅に浮かぶような状態だったが、運良く▲8三金からの即詰みを発見。
第1局の終了直後はしばらく手の震えが止まらなかったが、この日も同じだった。終了後しばらくして、去年も使っていた「リレー用扇子」が、目の前に置いたまま今日は全く使われていなかったのに気付いて苦笑いした。



望外の2連勝で予選通過。開幕前に「もし予選落ちしたら・・・」なんて考えていたのは何だったんだろうと思ってしまうような結果である。

第1局の前に自分がメンバーと「約束」をしたと書いたが、実は自分だけではない。第1局の前も、この第2局の前も、美貴様が「祝勝会用の食べ物を準備してるけど、負けたら捨てる」と宣言していたのだ。・・・そんなことを言われては、負けるわけにいかない。美貴様は捨てると言ったら本当に捨てそうな気がするし。

自分自身のことを言うと、もう負けることへの恐怖はなくなってしまった。リレー期間中、負けるよりもずっとずっと辛いことを経験してしまったから。それで逆に吹っ切れて、もう何も怖くなくなってしまった。ただ将棋に集中するのみ。



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