…今年はダメなのかなあ。

そんな考えが頭の中に浮かんでいた。きっと、今すぐ打ち消すべきであるはずの考え。
その考えを打ち消すことができず、積極的に肯定すらしようとする自分がいて。ちょっぴり、もどかしかった。



去年、ベスト4という最高の成績を残すことができた狼軍。惜しくも優勝には手が届かなかったけれど、何とも言えない達成感と満足感を味わうことができた。そして、打ち上げ会場(検討盤)できらりさんに渡された狼軍へのQ&A。「また来年も参加しようと思いますか?」の質問に、亀はこう答えている。

「今(終了直後)は燃え尽き症候群みたいな状態なので何とも言えないです。
でも、間違いなく来年も出たくなるはず。」




―――――2009年6月。今年もやってきた、リレー将棋の季節。モ娘(狼)軍は危機的状況を迎えていた。

去年のメンバーである、安倍さん、ガキさん、美貴様、そして亀。4人の合計R点が、リレー参加の上限である6400点を越えてしまったのである。参加資格のある他のメンバーも軒並み点数が高く、どうしてもチームが組めない。

そして、気持ちの問題もあった。全体的に「何が何でも出たい」というメンバーがいなかったのである。亀自身、参加受付の締め切りが直前に迫っていても、積極的に参加したいという気持ちは出ていなかった。
今年は応援にまわるのもいいんじゃないか。そして、どうしてもチームが組めないなら、それはそれで仕方がない。正直な気持ちはそんなところだった。


そんな中、救世主が現れる。リンリンさんが怒涛の勢いでR対局を消化し、参加を表明してくれたのだ。これによって、6400点以内でチームを組むことが可能になった。

紆余曲折を経て、よっすぃーさん、れいなさん、リンリンさん、そして亀の4人が、新生「モ娘(狼)軍」としてスタートを切る。
「狼の受け師」よっすぃーさん一局を通して安定した強さを発揮するれいなさん怖いものなしの「イケイケ流」リンリンさん。去年までとは一味もふた味も違うカラーのチームができた。



チームが決まると、次は作戦会議などに入る。どんな戦法を指していくか、どの順番で指すか、相手チームはどんな戦法を指してくるか、などなど。

去年の場合、このあたりは比較的サクサクと進行したような記憶があるのだが、今年はやや難航した。といっても、4人メンバーがいれば、棋風も得意戦法も将棋に対する考え方も4種類存在するのだから、ちょっとくらい難航するほうがむしろ自然なのだろう(リーダーを任された亀の統率力不足もあります…ごめんなさい)。チームとしての団結力は、対局を重ねることで徐々に強くなっていくのだと思う。


何よりも、初出場3人(+アガリ症1人)のチームにとって仲間の存在というのは非常に心強い。去年までの参加メンバーによる的確なアドバイス。そして、大勢の人たちによる心からの応援。去年も同じようなことを書いたと思うが、モ娘(狼)軍のメンバーは決して4人だけではないのだ。



7月18日。狼軍の初戦の前日は、対抗戦などで交流が深い大生板からの出場チーム「大生軍」の対局日だった。開始時刻の21時に駆けつけて応援。

大生軍の中飛車に相手の居飛車穴熊という戦型から、中盤難しい形勢が続いたが、穴熊の本領を発揮されて徐々に苦しくなってしまう。そして迎えた終盤の第1図。



後手が△2四桂と据え、次の△1六桂打を狙ったところ。美濃囲いは桂の王手をくらってしまうと、たいてい生き延びることはできない。

ここからの指し手には感動させられた。

第1図以下、▲1四歩△同歩▲1七歩!(第2図)



…ああ、これだよこれ。これがリレー将棋だ。
忘れかけていた何かを思い出したような気がした。

辛い局面をジッと耐える精神。最後の最後まで勝負を諦めない執念。
それを笑う人はいるかもしれないけれど、これこそが奇跡的な大逆転への第一歩であり、これこそがリレー将棋なのだ。

惜しくも大生軍に奇跡は起こらなかったけれど、この一局を見て勇気をもらい、明日は頑張ろうと思えた。

そして…今年もリレー将棋を指せるのが嬉しい。やっと、心からそう思えた瞬間だった。


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