─────さて、亀には野望があります。
来年も出場すること。そしてBチーム、できればCチームも出場させること。─────

初出場のリレー将棋。惜しくもベスト8で敗れた後、舞台裏レポートでこんなことを書いたのは、もう3年近くも前のことだ。当時亀は18歳。…何とも感傷的な気分になってしまう。

2チーム出場。これは亀だけではなく、当時のメンバーだった安倍さん、ガキさん、美貴様、みんなの願いだった。



3年後、2010年6月。狼軍は、今年もリレー将棋に向けて動き出していた。今年の参加メンバーは8人。…4年目にしてついに、2チーム出場が可能になったのだ。



チーム編成会議を開き、2チームのメンバー構成が決まった。きらりさん、よっすぃーさん、石川さん、茉麻さんのチーム。そして、亀、安倍さん、あやちょさん、リンリンさんのチーム。

きらりさん率いるチームは、Relay of Ishikawa,Sudou,Kusumi,Yoshizawa→RISKY→危険、ということで「チーム危」
亀のチームは、Wada,Abe,Linlin,Kamei→WALK→歩く、ということで「チーム歩」。2チームの新生・モ娘(狼)軍が誕生した。

危チームではよっすぃーさん以外の3人が、歩チームではあやちょさんが、それぞれリレー初参加となる。特に危チームは経験者が少ないので普通は不安一杯となるところだが、強力なバックアップが存在するのが狼の大きな強みだ。経験者からのアドバイス、多くの声援。それらに支えられ、安心して対局できる。

去年よりもさらに大きくなった「狼軍」という名の船は、力強く出航した。



予選開幕2日目の、7月10日。この日は、姉妹団体?の大生さんからの参加チーム「大生軍」の対局日だった。去年は惜しくも2連敗で予選敗退となってしまった大生軍の初勝利を祈って、応援に駆け付ける。

戦型は、大生軍のゴキゲン中飛車から相穴熊に。中盤、大生軍が駒損ながら成り駒を作って成功したように見えたが、相手の好防もあってその成り駒を取られてしまう。苦しくなるも、逆転を信じて必死の防戦を続ける。



第1図は、▲6一飛に△6九飛と打ち返された局面。これはさすがに決まってしまったか…と見ていて思った。

第1図以下、▲2八角△5一歩▲6四飛成△同飛成▲5三角△同竜▲同と△6九飛▲4二銀△2二銀▲3三銀成△同銀▲3二桂成△2二金▲同成桂△同銀▲3二金△3一金▲4二と△4八歩成(第2図)



過去の舞台裏レポートでも何度となく書いてきたが、リレーは本当に最後の最後まで諦めてはいけない。▲2八角に△4八歩成が詰めろではっきり後手勝ちの形だが、後手はここで△5一歩。その後もずっと受け続ける。リレーにおける、勝ちが目の前まで見えてきた局面でのプレッシャーの大きさ。第1図から第2図までの手順には、それが生々しく表れているように思う。

第2図の△4八歩成に▲3一と、ならどうなっていただろうか。後手は金が一枚しかないので、先手玉は見た目以上に詰みにくい形だ。実戦は第2図から▲2九金△6五角。プレッシャーに押し潰されそうになっていた相手が、最後の最後に好手を指した。大生軍の奮闘は、あと一歩、本当にあと一歩のところで届かなかった。

名局だな、と思った。リレーの場合、好手、妙手が多いものだけが名局 というわけではない。チームのために、強いメンバーも弱いメンバーもそれぞれの全力を尽くす姿。プレッシャーに押し潰されそうになりながら、それでも必死に最善手を求め続ける姿。そういったものが棋譜から伝わってくるものこそ、リレーでの「名局」なのだ。

去年、リレーにあまり気持ちが向いていなかった自分に勇気をくれたものは、他でもない大生軍の将棋だった。今年も勇気をもらった。リレーには、見る人に勇気を与える力があるらしい。



大生軍の激闘から一週間後の7月17日。今度は狼軍から危チームが出陣した。1将茉麻さん、2将よっすぃーさん、3将石川さん、4将きらりさんの布陣。戦型は相矢倉から捻り合いの展開になった。



第3図は▲7四歩と銀を取ったところ。途中怖そうなところもあったが、こうなると7四の拠点が大きく、やや指せそうな展開か。

第3図以下△8六歩▲同歩△同飛▲8七銀△8四飛▲7五銀△8五飛▲8六銀上△8七歩▲同玉△8二飛▲8三歩△同飛▲8四歩(第4図)



▲8七銀に△同飛成と強く切って勝負する順もありそうだった。相手も当然それは考えていただろうが、リレーで決行するにはやや勇気がいるところでもある。本譜は手順に飛車を押さえ込みながら先手玉が上部に逃げ出せる形になった。最後は相手の猛攻をかわして入玉を果たし、127手で危チームの勝ち。狼のチームでは、初出陣で勝利を挙げたのは危チームが初めてとなる。4人中3人が初参加のチームとは思えないような、落ち着いた指し回しだった。

対局後は恒例の、そして今年最初の祝勝会。大生の方も何人か応援&祝勝会に来てくれていて、こうして危チームも歩チームも大生軍も関係なく、みんなで勝ったチームのお祝いができるのはいいな、としみじみ思った。大生軍が見せた頑張り。危チームが作ってくれたいい流れ。それらを受けて、翌日の歩チームの初対局、いい将棋を指さなければ。そう心の中で誓った。


inserted by FC2 system