1回戦に勝利し、いい流れで2回戦に臨めることになった。その2回戦は、1回戦の翌週、7月23日。

間隔が1週間だけということで、作戦会議のための時間は決して十分にはとれなかった。それでも大まかな方針だけはしっかり確認して、あとは「人事を尽くして天命を待つ」のみ。いくら念入りに準備をしたとしても、いくら強力なメンバーを揃えたとしても、必ず勝てるとは限らないのがリレー将棋。「リレー将棋は最も運のいいチームが優勝する」、久米さんもそう言っている。

対局当日。1回戦の日は晴れていたがこの日は曇り空で、気温もそれほど上がらず過ごしやすい日だった。昼食は1回戦と同じく、モスのロースカツバーガー。こうしたゲン担ぎや、対局当日の過ごし方、そしてリレー将棋用の扇子など、リレーに関する「定跡」が色々と確立されている。この定跡手順をなぞることで、少しは気持ちも落ち着く。



2回戦の相手は「ぴよ軍団」チーム。1回戦と同じく、バランス型のチームが相手になった。大生軍の2回戦の相手もバランス型で、今年は例年よりもバランス型のチームが多い印象を受ける。

自分の中では、1回戦の勝敗に関係なく2回戦ではオーダーを変えてみようという構想(妄想)があったのだけれど、変えないで戦いたいという声があり、結局は変えないことにした。1度勝っているオーダーなのだから、敢えて変えることもない、とも言える。というわけで、今回も1将から茉麻さん→よっすぃーさん→亀→もみじさん、のオーダー。

▲7六歩△8四歩▲3八銀△8五歩▲7七角△3四歩▲8八銀△6二銀▲2二角成△同銀▲7七銀△4二玉▲2六歩△3二金▲3六歩△3三銀▲2七銀△3一玉▲8八飛△6四歩▲3八金△6三銀(第1図)



今回は狼軍の後手番。3手目の▲3八銀は珍しい手で、本譜のような角交換型の陽動振り飛車を相手は得意にしているようだった。その過程で、先手は▲7七角と上がった後に▲2二角成と角交換しているので、後手が2手得している計算になる。先手の主張点はいつでも▲8六歩の仕掛けがあることで、後手はこれに気を付けながら駒組みを進めなければならない。

第1図以下▲5八金△5二金▲4八玉△7四歩▲4六歩△4四歩▲4七金左△1四歩▲1六歩△7三桂▲3九玉△9四歩▲3七桂△4三金右▲5六歩△5四銀▲2八玉△2二玉▲6六銀△8六歩▲同歩△4九角(第2図)



△1四歩で30手になり、2将のよっすぃーさんにバトンタッチ。茉麻さんは今回も非の打ちどころのない駒運びだった。

△7三桂と跳ねて、8筋からの仕掛けの脅威は薄れた。かわりに注意しなければならないのは桂頭攻めと、△4三金右と上がったことで▲5一角のような筋が何かの時に生じる点。

▲6六銀は、後手が何もしなければ次に▲7五歩と仕掛ける狙いで、△6五歩なら▲5七銀〜▲4八銀と囲いを強化できる。▲7七桂の活用も魅力的で、先手には指したい手がたくさんある状況だ。

一方の後手は、今の形がほぼ最善に近い(△1二香から穴熊を目指すのは、駒が偏る意味があるし将来の端攻めも怖い)。というわけで、仕掛けるのであればこのあたりのタイミングだろう。よっすぃーさんは熟考の末、△8六歩▲同歩△4九角と動いて行った。

第2図以下▲5七金△6五桂▲同銀△同銀▲7三角△8一飛▲5五桂△4二金引▲6四角成△6一飛▲6三桂成△5四銀▲4八金△6三銀▲7三馬△3九銀(第3図)



序盤で角を交換した将棋の場合、角の打ち込みを警戒しなければならないので、駒組みの際には「囲い(自陣の一部分)の強固さ」よりも「自陣の全体的なバランス」を重視することが多い。この将棋のような戦型であれば、居飛車側は△4三金右と上がらず△5二金型のままにしたり、振り飛車側は銀冠まで組まずに高美濃で保留したり。

なので、第2図の△4九角が成立していれば、先手の駒組みを直接的に咎めていることになる。黙って△6七角成とできれば不満はないので、▲5七金はこれくらいだろう。△6五桂に▲5八金なら、△同角成▲同飛△8六飛▲8八歩△7六飛(変化1図)で後手良し。



△6五桂▲同銀△同銀に▲4八金としても、△2七角成▲同玉△7六銀から一方的に攻めまくって後手指せるだろう。先手は▲7三角の反撃に期待する。

▲5五桂は筋ではあるが、ここではどうだったか。▲6四角成に△6一飛とまわり、▲6三桂成を誘って△5四銀と引くのが絶品すぎる手順。ここではっきりと後手がリードを奪った。▲4八金にも△3九銀の返し技があり、一気に勝勢に近い優勢を奪い取ってしまった。よっすぃーさん、1回戦に続いて素晴らしい指し回しでバトンを繋いでくれた。

第3図以下▲1七玉△4八銀成▲同飛△6五桂▲6六金△2七角成▲同玉△5七桂成▲8八飛△4七成桂▲2九角△4八金▲2五桂△3八銀▲同角△同成桂▲3七銀△4九角(第4図)



第3図の△3九銀に▲同玉は△2七角成ではっきり良し。▲1七玉と頑張るくらいしかないが、△4八銀成▲同飛に△6五桂が、交代時の作戦会議中にもみじさんが指摘していた好手。これでわかりやすい展開になった。△5七桂成まで進み、後手の攻め駒はこの時点で3枚だけだが、先手も守りは薄く、後手には△7二銀!▲同馬△6六飛と駒を補充する切り札もある。

△4七成桂〜△4八金〜△3八銀と着実に迫り、ゴールまでもう一歩。▲3八同角に△同金は▲同飛と取られるので、形は悪いが成桂で取る。こういう時はとにかく、盤上から攻め駒が消えないように気を付けて指していけばよい。▲3七銀の粘りにも△4九角と陰から打つのがぴったりの決め手。本局は2度の△4九角が勝利を手繰り寄せたと言ってもいいだろう。

第4図以下▲3三桂成△同金右▲4八銀△同成桂▲1七玉△1五桂▲2八銀△2七銀▲4八飛△1六銀成▲1八玉△2七桂成▲2九玉△2八成桂▲同玉△2七成銀▲2九玉△3八銀▲同飛△同角成(第5図)まで、後手の勝ち



▲4八銀には△同成桂が空き王手になる。▲1七玉には△3七銀と打っておいて次に△1五歩を狙うのも有力だったようだが、本譜は△1五桂と決めに行く。▲1五同歩なら△1六銀以下の詰み。

このとき検討盤では、「△1五桂はらしくない手」「らしくないことをしちゃうのがらしいとも言える」なんて会話がされていたようで。自分の中でも「普通の手を積み重ねる」という信念は一応あるけれども、かっこよさそうな手も見えた時は指してしまうし、この時も△1五桂が見えた瞬間から他の手は考えられなくなっていた。

△1五桂▲2八銀△2七銀に、▲1五歩は△2八銀不成以下の詰み。△2七桂成の局面で90手になり、もみじさんにバトンタッチした。

△2八成桂に▲同飛なら即詰めはないが、△2七成銀で一手一手だろう。本譜は相手が首を差し出した格好で、もみじさんがきっちり詰ましてフィニッシュ。連勝で予選通過を決めることができた。



嬉しい誤算、という表現がぴったりなくらいの快勝。ここまでの2局、茉麻さん、よっすぃーさん、もみじさんがそれぞれ最高の仕事をしてくれている。自分もこの2回戦でようやく、「孤独な戦い」から解放された。怖いくらい順調だと思う。

しかし、本選からは負けたら終わりの一発勝負。何が起こるか分からない。慢心はせず、ただその中でも楽しむ心は忘れずに、走っていきたい。



狼軍の対局の翌週、7月31日に、大生軍も2回戦の対局を迎えた。相手はやはりバランス型の「門前払い」チームで、大生軍は1将からしまさん→安倍さん→いたちさん→リンリンさん、のオーダー。

相矢倉の将棋になり、作戦勝ちになった大生軍が快調に攻める展開。しかし相手の反撃が見た目以上に厳しく、やや苦しい終盤戦を迎えていた。



第1図は92手目、▲5三角に対して7五の銀を△6四銀と引いたところ。ここでは際どい勝負になっていて、何かあってもおかしくなさそうな雰囲気。4将リンリンさんの持ち味が発揮されそうな展開でもあり、もちろんリンリンさんはここから踏み込んでいった。

第1図以下▲2二銀△同金▲同桂成△同玉▲3一銀△2一玉▲2二金△同飛▲同銀成△同玉▲8二飛△3二桂▲5八飛△同角成▲2一金△1三玉▲3一角成△1四玉(第2図)



非常に難解、しかし勝ち筋が何かありそう、ということで、検討盤での検討もかなり盛り上がっていた。

▲8二飛の王手が結果的には惜しくも敗着となってしまったか。第2図で▲2五銀と出られれば詰みなのだが、5八の馬が利いていてギリギリ詰まなかったのだ。これは局面があまりにも難しすぎたし、指運が悪かったと言うしかないと思う。

▲8二飛を利かさずに単に▲5八飛でどうなっていたか。今度は△同角成なら▲2一金(変化1図)で詰んでいる。△同玉は▲4一飛。△1三玉は▲1四香で、△1四歩には▲3一角成△2四玉▲2五飛まで。1四に金銀を合駒するのは▲同香と取ってやはり詰み。



ただ、▲5八飛には△5三銀と角を外す手があってやはり一歩届かなそうか。いずれにしても非常に難解な終盤戦だった。

大生軍は1勝1敗となり、3回戦に全てをかけることになった。ここまでの内容としては、多少苦しくなっても粘り強く頑張り、リレーらしい、いい将棋を指している印象を受ける。

3回戦の相手は、狼軍も過去に戦ったことがあるあの「しゅないだぁ〜ず」。強敵だが、きっと大熱戦になるだろう。


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