連勝で予選通過を決めた狼軍は本選1回戦がシードとなり、対局の間がだいぶ空くことになった。その間に大生軍の対局が行われたので、まずそれを振り返りたい。

8月13日、大生軍の予選3回戦の相手は「しゅないだぁ〜ず」。ただ、syunaidarさんが当日現れなかったため代打が起用され、相手としてはエース不在の中での対局となってしまった。

しかし、相手がどうこうというのは関係なく、この日の大生軍はとにかく完璧だった。相手の四間飛車に対して居飛車急戦を挑み、序盤の相手の疑問手を咎める仕掛けでリードを奪う。



第1図は67手目、▲7一竜と馬取りに逃げた局面。ここから3将のしまさんが、△4九馬▲同金△4四角▲7二竜△6二金▲8一竜△5七桂不成▲3九金△6六角(第2図)と好手順でリードを広げた。



△4四角〜△6二金は手堅い指し回しで、何かの時に△6一歩と受ける手を用意している。しかし角・金と手放して攻め駒不足が心配されるところだが、△5七桂不成〜△6六角が教科書通りの好手順。第2図は次に△3九竜▲同玉△4九桂成以下の詰めろになっていて、本譜▲4八銀の受けには△5六桂の追撃が厳しくなった。



少し進んだ第3図、△1五歩も美濃崩しのお手本と言える手筋。▲同歩なら△1八歩▲同香△1九銀▲同玉△3九竜で寄り筋になる。これが決め手となって、112手までで大生軍の快勝、予選通過を果たした。一局を通して、四間飛車を急戦で破る際のお手本になるような内容だったと思う。


大生軍も本選1回戦はシードとなり、2回戦は8月27日に行われた。相手は「男魂」チーム。相手の四間飛車穴熊に、大生軍は船囲いから5筋位取りの作戦を選んだ。



第4図は63手目、▲6六歩と打った局面。後手はとりあえず△5五歩と打っておきたくなる形だが、ここから3将安倍さんがさすがの構想力を見せた。

第4図以下△3五歩▲5四飛△8四飛▲5八飛△3四銀▲5九飛△5六歩▲6八角△5五銀▲5七歩△同歩成▲同角△5六歩▲4八角△4五桂▲5八歩(第5図)。



後手は角のラインを活かしての端攻めが狙い筋の1つなので、△3五歩は少し気付きにくい手だと思う。その後△3四銀と引いて、△5六歩とここから打つのが安倍さんの狙いだった。▲同飛は△4五銀なので取ることができず、△5五銀と押さえ込む形に。

第5図ではじっと△8一飛と引いて、△1二香から△1一飛のようにゆっくり態勢を整えていけば、先手は動かす駒がなさそうだ。ただそれは観戦者の立場だから気軽に言えることであって、安倍さんが本譜△7五歩から動いて行ったのも、手順としてはなるほどと思えるものである。その後、わずか一手だけのミスが致命的になり、先手の捌け形となってしまった。惜しすぎる敗戦。

検討盤での感想戦。お互いがお互いの頑張りを讃え、自らの指し手を反省している、大生軍のメンバーの姿。この表現が適当かどうかは分からないけれども・・・美しいな、と思った。リレー将棋というものを象徴するような、美しい光景。

自分たちもこうありたい、と思った。




狼軍の本選2回戦は、9月3日、土曜日に行われた。

天気はあいにくの雨。基本的に雨の日は外出する気分になれないのだけれど、この日だけは気合いで外に出た。行き先はモスバーガー。リレーの日は、ここに行かなきゃ始まらない。

前回までは「ロースカツバーガー」を食べていたけれど、今回は新発売の「タレカツバーガー」にしてみた。個人的には、こっちのほうが好みかもしれない。

家に戻ってからは、やはり掃除や洗濯などをして過ごす。これでなんとなく、スッキリした気分でリレーに臨むことができるのだ。



本選2回戦の相手はサークルからの出場の「サトラレC」チーム。今回も全員が1000点以上のバランス型チームだが、今までとは違って3将が最高五段の強敵である。狼軍は今回もオーダーを変えず、茉麻さん→よっすぃーさん→亀→もみじさんの打順。

初出場のとき(当時1600〜1700点くらい)は、2000点を相手にするだけでも震えあがっていた。今は、格上の2300点相手でも、自分も力を出し切れればしっかりついていける、という自信があった。自分でも気付かないうちに成長できたのだと思う。

▲7六歩△8四歩▲6六歩△3四歩▲6八飛△6二銀▲4八玉△5四歩▲3八玉△4二玉▲2八玉△3二玉▲1八香△1四歩▲1九玉△5二金右▲2八銀△5三銀▲3九金△3三角▲7八銀△2二玉▲5八金△3二銀(第1図)



狼軍の後手番で対局開始。完全に余談だけれども、▲7六歩△8四歩に▲6六歩という手は少し違和感がある。▲6六歩という手の意味は「相手が△3四歩と突いた時に角交換されないようにする手」なので、▲7六歩△8四歩には▲6八飛でいいと思うから。・・・もちろん、▲6六歩を咎める手順があるとは思えないし、そもそもこんな細かいことを考えるのは自分らしくないのかもしれないけど。

先手は四間飛車に振った後、▲1八香で穴熊の作戦を明示した。これは想定された戦型の1つで、こちらは△2二玉〜△3二銀で左美濃の陣形を組み上げる。

第1図以下▲6七銀△8五歩▲7七角△4四銀▲6五歩△4二角▲8八飛△7四歩▲6六銀△2四歩▲5六歩△1二玉▲6八角△2三銀▲4八金寄△3二金(第2図)



△4二角までで30手となり、2将のよっすぃーさんにバトンタッチ。最後の△4二角は茉麻さんが工夫を見せた手で、例えば▲4八金寄には△8六歩▲同歩△同角▲8八飛△7七角成▲8二飛成△6七馬と決戦に持ち込む順を見せている。反面、先手の角が銀一枚隔てて後手玉を睨んでいる形(例えば▲5六銀〜▲4五銀のような筋が生じる)なので、そこは一長一短というところか。

再開後の一手は▲8八飛。これは△8六歩からの仕掛けを直接防いで、リレー将棋らしい、一番手堅い手。ただ、この手を指させれば基本的に居飛車は不満なしと考えていいと思う。

後手の理想は、囲いを銀冠に発展させて△1五歩や△2五歩と位を取ること。そうすれば終盤で△1六歩や△2六歩と、穴熊の急所を直接攻めることができる。そこで先手は▲6六銀〜▲5六歩。▲5五歩からの仕掛けを見せて牽制してきた。こうなると銀冠まで組むのは難しそうかな、と思っていたのだが、先手もすぐに戦いを起こすつもりはなかったようで、△3二金と締まって一応は銀冠が完成した。

ただし厳密に言えば、△3三銀〜△4四歩〜△4三金右(あるいは△5三角〜△4二金右)まで指せて、ようやく一人前の銀冠と呼べる。第2図は5二の金が取り残されている状態で、例えばこのまま飛車交換になって▲8二飛などと打たれると、銀冠より美濃囲いのままのほうが良かった、ということになってしまう。

第2図以下▲4六角△9二飛▲6八角△8二飛▲4六角△9二飛▲6八角△8二飛▲9六歩△7三桂▲9五角△6二金▲6八角△9四歩▲9八香△3三桂▲9七香△8一飛▲3六歩△2二玉▲7五歩△同歩▲7八飛△1五歩(第3図)



▲4六角は気になるところだが、△9二飛と寄っておいて、8六には4二の角も利いているので大丈夫。▲4六角〜▲6八角の繰り返しには最初首をかしげたが(千日手は後手勝ちのルール)、2将はこちらの点数が上、3将は相手の点数が上ということで、手数を稼いで3将にまわそうという意図なのだろう。▲9八香〜▲9七香にもその意図が表れている。リレーで戦い慣れたチームの、老獪な作戦。

59手目▲3六歩と、60手目△2二玉。3将へのバトンタッチ直前、まだ駒はぶつかっていないけれど、この2手の交換が、結果的には本局のハイライトになったと思う。

3将に代わった瞬間、相手は予定通りとばかりに▲7五歩△同歩▲7八飛と動いてきた。桂頭を狙われて忙しい局面だが、このタイミングでじっと△1五歩と伸ばせたのが、あまりにも大きい一手になった。いつでも端に襲いかかれるようになったのである。

結果論になってしまうかもしれないが、先手は▲3六歩のところで▲7五歩△同歩▲7八飛(変化1図)と仕掛けるのが最善のタイミングだったと思う。



第3図と変化1図の違いは大きく、変化1図では(1)△1五歩と伸ばしても、端を攻めるにはもう一手△2二玉と指さなければならない(2)△2五歩なら反撃の準備は整うが、桂を渡すと▲2四桂が厳しくなってしまう。つまり、バトンタッチの直前に仕掛けるのが先手にとっては最も条件が良かったのだ。このあたり、何とも言えない巡り合わせというか、リレー将棋のアヤというか、そういったものを感じずにはいられない。

第3図以下▲7五銀△6五桂▲7六飛△8六歩▲同歩△7一飛▲7四歩△8八歩▲7七桂△同桂成▲同飛△2五桂▲2六歩△1七桂成▲同香△1六歩▲同香△同香▲1七歩△同香成▲同桂△1六歩▲1八歩△1二香▲2九桂△1一飛(第4図)



▲7五銀には△6五桂と跳ねるのが気持ちいい(次に△7七歩〜△7五角がある)。またこうなってみると、前譜で指した△6二金という(普通はマイナスになる)手も活きてきそうである(例えば▲6六銀が飛車成りの先手にならない)。こういう△6二金であったり、△2二玉と寄った手が活きて端攻めが実現する展開であったり、前に指した手が自然に活きてくるというのは非常に気分がいいし、またそういう時は形勢もいいことが多い。逆に言えば、やむを得ずマイナスの手を指してしまっても、後でその手が活きてくるような展開を目指すのが大切な考え方になる。

左辺で桂を入手し、いよいよ△2五桂と端に狙いを付ける。▲2六歩の催促は、代わる手が難しいということもあるのかもしれないが、△1七桂成に▲同銀と取れなくなるのが痛い(△2七桂がある)。一直線に△1一飛まで進み、ここでもみじさんにバトンタッチ。まだ明快に優勢というほどではないが、序盤に茉麻さんとよっすぃーさんの指した手が全て活きてくる展開にはなった。

2将のよっすぃーさんのところで手数を稼がれ、自分に交代したところで勝負を仕掛けられる、というのは、野球で言えば前の打者が敬遠された後の打席に近いものがあるのだろうか。決して熱くはならなかったけれど、適度に闘志に火がついて。結果的にはそれが、自分の中で満足のできる内容に繋がったと思う。

第4図以下▲3八金上△7六歩▲同飛△6四桂▲同銀△同角▲4六香△6七銀▲6六飛△6八銀不成▲同飛△8六角▲6五飛△9七角成▲8五飛△1七歩成▲同歩△6四馬(第5図)



▲3八金上は、将来の△2七桂の筋に備えたもの。△7六歩も大きな利かしで、▲4六歩と飛車の横利きを通す受けを消しながら、銀が入れば△6七銀のような手も見ている。

△6四桂に▲6六飛は△5六桂▲同飛△7五角がある。▲同銀△同角で銀を入手し、狙いの△6七銀を実現させた。

△8六角は▲8八飛で飛車を捌かせるので勇気のいる手だが、△9七角成〜△1三香の三段ロケットを実現させれば十分にお釣りが来そうな形か。本譜も△6四馬が落ち着いた好手で、気付けば駒割りは後手の角得。あとは、焦らず着実にゴールまでたどり着けるか。

第5図以下▲5五歩△同銀▲2七銀打△1五桂▲1六銀△2七香▲3七銀△2九香成▲同玉△5六桂▲1九香△4八桂成▲同銀△4九角▲8三飛成△4六銀▲同歩△2七金▲同銀△同桂成▲同金△3八銀(第6図)まで、後手の勝ち



本譜のもみじさんの攻めは、いいお手本になると思う。銀取りの△1五桂。銀取りの△2七香。金取りの△5六桂。大駒を切ったり駒をタダで捨てたりするのはあくまでも「応用技」であって、まず基本になるのは「自分の安い駒(桂や香)で相手の守り駒(金や銀)を攻めること」なのである。分からない時はとりあえず守備駒の金取りや銀取り。それが終盤戦での1つのコツだと思う。

二周目の茉麻さんにバトンタッチした直後の△4九角(飛車取り+金取り)も、その基本に忠実な急所の一着。その後の手順も言うことなしの完璧な寄せで、△3八銀までで先手投了。予選の勢いそのままに、今回も快勝することができた。



連続での快勝。ただ快勝というのはあくまでも結果的なもので、その過程はかなりギリギリの勝負だと思う。本局も、駒がぶつかる直前の、何気ない2手の交換が勝敗を分けたと言っても過言ではないだろう。

ベスト16。もう十分に胸を張れるところまで来たと思う。もちろんまだまだ上は目指したいけれども、同時に、ギリギリの勝負を楽しむ気持ちを持ち続けたい。


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