初オフ会レポート「日常と非日常の交差点」



平和な日常がずっと続いている時、ふと「非日常」が恋しくなることがある。普段は通らない道を通ってみたり、行ったことのない店に入ってみたり。
日常と非日常の交差点は、そこら中にある。時に非日常を求め、交差点を曲がり、そしてまた日常に戻ってくるのだ。



3月3日、土曜日。朝の4時過ぎには目が覚めていた。前日は「将棋界の一番長い日」をテレビで見ていて、寝たのは深夜2時頃だったのだけれど、ほとんど眠れなかった。

咳が出ていて、体調はあまり良くない。少し前から、電気代節約のために暖房をつける時間を減らしていたのだけれど、さっそく裏目に出てしまったらしい。とりあえずシャワーを浴びて身体を温めてから、身支度を始めた。


安倍さん、リンリンさんと一緒に盛岡の娘。コンに行こうという話になったのは、2〜3ヶ月くらい前だっただろうか。地元だし会場も近いし、久しぶり(4年ぶりくらい)に現場参戦もいいかなと思って、自分も行くことにした。石さんも大阪から駆け付けるということで、3人に会うことに。

自分が狼将棋に初めて来たのは2006年の秋頃のことで、安倍さんにはその頃からずっとお世話になっている。リンリンさんや石さんとも3年以上のお付き合いで、夜が明けるまでチャットで語り明かした回数はもはや数えきれない。それでも、住んでいる地域がみんなバラバラなこともあって、実際に会ってみたりする機会はなかった。

最近になって、石さんが同じ大阪在住のきらりさんと会ったり、石さん、安倍さん、リンリンさんの3人でコンサートに行って会ったりするようになってきた。その流れで、自分もいよいよ狼将棋のメンバーと会ってみようということになったわけである。ネット上で何年もの付き合いがある人と、初めてオフラインで対面する。何とも不思議な感覚だった。


家の近くでバスに乗り、11時頃に盛岡駅に着いた。待ち合わせは11時20分過ぎなので、待ち合わせ場所の近くにあるドトールでアイスティーを飲んで気を落ち着かせる。遠足前の子供みたいに、ドキドキ、ワクワクしていた。11時15分を過ぎ、意を決して待ち合わせ場所へ。

目印として扇子を持って立っている、と言ってあるので、カバンから扇子を取り出して手に持つ。・・・ちょっと恥ずかしかったので、手で半分以上隠すように持っていた。それでもちゃんと見つけてもらえたようで、やがて3人の方がこちらに近づいてきた。感動の対面。緊張しながら挨拶を交わす。

3人の中で一番イメージに近かったのはリンリンさんだった。石さんは思っていたよりも背が低めで、安倍さんは自分の中で「髪は長めで知的な雰囲気」というイメージだったのだけれど、髪は短くてすごく爽やかな雰囲気の方だった。普段のチャットではいくらでも気軽におしゃべりできるのに、実際に会うと緊張やら気恥ずかしさやらで上手くしゃべれない。まあ、普段もリアルでは大人しい方なので、ある意味普段通りな感じではある。

ちょうどお昼時だったので、駅前にある盛岡冷麺の有名店「ぴょんぴょん舎」で昼食をとった。食べながら話をして、少しずつ緊張もほぐれてきた。冷麺も美味しいと言ってもらえて一安心。

食後は、開場までの時間潰しのためカラオケボックスに移動。何曲か歌った後に将棋が始まった。自分が石さん、安倍さんと30秒将棋で対局。石さんとの将棋は終盤がなかなか難解で、最後は指運に助けられた感じ。安倍さんとの将棋は時計と店からのダブル秒読みに追い立てられたこともあって、終盤は王手飛車を2回くらったり、逆王手や玉の素抜きの筋にどこまでも泣かされたり、詰み逃しをして負けたり、ネタ的には最高の将棋になった。





開場時間が近くなり、会場の盛岡市民文化ホールへ向かう。文化ホールの入っている「マリオス」という建物には1度来たことがあったかどうかという感じで、文化ホールは完全に初めて。開演前の独特な雰囲気も相まって、再びドキドキ&ワクワク。いい機会だからグッズなるものも初購入してみようと思って、フクちゃんのうちわを買ってみた。

宮古市出身の演歌歌手・みやさと奏(かな)さんの歌に続いて、いよいよ開演。お客さんの熱気も含めて、やっぱり迫力が凄い。自分はリンリンさんと連番で1階の12列だったので、メンバーの顔もそこそこよく見えた。ガキさんとれいな、あとはフクちゃんに目がいく率が高かったと思う。特にフクちゃん、噂には聞いていたけど色気が半端なかった。汗で髪が濡れているのが、さらにドキッとさせられて。まだ高校入学前とは思えない。

今までに何度か兄と行ったコンサートでは、自分は基本的に突っ立っているだけで、たまに手拍子をしたりするくらいだった(それでも十分に楽しんでいたつもり)。今回は、そんな自分に見かねた(?)リンリンさんが途中でサイリウムを手渡してくれて、そのおかげで今までの何倍も動けた。それでもリンリンさんや他のお客さんには遠く遠く及ばないわけで、やっぱり行き慣れている人は違うなと思った。

今回は、曲との出会いも楽しみにしていた。生で聞いて、印象に残る、好きになる曲が1曲でも2曲でもあればいいな、と。「シルバーの腕時計」と「愛しく苦しいこの夜に」が個人的に好きだった。・・・こういう系統の曲に好みが偏っているのだ。

会場の熱気と、風邪気味だったのもあってずっと熱に浮かされたような状態だったのだけれど、(アンコール前の)最後に「歩いてる」が流れ始めた時は鳥肌が立って背筋もゾクッとなった。もうすぐ震災から1年になろうという時期。震災の影響で1年前にコンサートを行えなかった、そして徐々に立ち直っていこうとしている岩手の地で歌うのに、これだけぴったりな歌はそうそうない。この曲を聞けて、そしてみんなで歌えて、本当に良かった。



夜は居酒屋「半兵ヱ」で打ち上げをして、さらになぜか雀荘で一勝負して。夢のように楽しい時間は、あっという間に過ぎていった。ちなみに「一勝負」は小場の競り合いから西場までもつれ込み、西場で親満→子の跳満ツモと爆発したリンリンさんが一気に持って行ってしまった。自分は西四局の満貫ツモでかろうじて二着に滑り込むのが精一杯。でもまあ、打ち上げの席でおでんの取り順を賭けたじゃんけん勝負は珍しく勝てたので、良しとしよう。

お酒を飲みながら4人で話をしている光景は、いつも検討盤でしているチャットとほとんど変わらないものだったと思う。そこに安心感と嬉しさを覚えた。



安倍さん、リンリンさん、石さんをそれぞれホテルまでお見送りしてから、久々にタクシーを拾って帰宅した。家に着いたのが0時半頃。ものすごく濃い、夢のような12時間だった。そしてまた、「日常」へと帰って来たのだ。

カバンを開けると色々なもので溢れ返っていた。久々に使ったビニールの将棋盤とプラ駒、フクちゃんのうちわ、リンリンさんにもらったサイリウム・・・。そして、来ていた服にはリンリンさんの吸っていたタバコの匂い。


日常と非日常の交差点は、そこら中にある。ふと非日常が恋しくなった時、交差点はいつでもそこにあって、簡単に足を踏み入れられるのだろう。


(完)

安倍さん、リンリンさん、石さん、素敵な思い出をありがとうございました。


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